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崖の女 |
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ぶんぶんぶん -
小説
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土井マクベス 河原の道路では、キャッチボールをしていた。これから始まる試合のウォーミングアップのようだ。隣のグランドでは、試合の掛け声や応援が五月の澄みきった空に響いていた。河川へ通じる急傾斜な自動車道まであふれてトレーニングをしている。正面グランドの試合が長引いているのが、トスバッティングをする選手のイライラでわかった。こぼれ球に注意を払いながら、その脇を通って道路を渡った。トスの打球がオーバーして、ごめんごめんと謝る声が聞こえた。 公園の入り口でアイスキャンディを買った。自転車の荷台にくくりつけた幟の「昔懐かしい味」というコピーにつられてしまった。一本五〇〇円だというので思わず、高い!と叫んだら、若いキャンディ売りは、引きつった笑みを浮かべ、仕方がないという表情を示してから言った。 「わたしのせいじゃないの。亭主がこの値段で売れと命じるの」 そう言われると男の影に怯えて引っ込みもつかなくなって買ってしまった。一本を二人で食べるほど、親しいわけではないから、二本求めて、連れの女に一本を渡した。 「キャンディを食べると幼少の頃を思いだすんだよ。あ、幼少というのは、殿さまのような位の高い人の子供時代を尊称する言葉らしい」 今、買ったアイスキャンディを食べながら、哲也は女の方に眼を向けた。 「ということを、昨日生徒に教わったよ」 女はクスッと笑った。 |
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