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犬は吠えるが、バラ線越は続く。 |
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ぶんぶんぶん -
随筆
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氷見 公美恵「バラ線越え」。 千葉県の片隅、K女子寮で暮らす122人の 女子大生たちは、門限破りのことをそう呼んでいた。いや、きっと今もそう呼ばれているに違いない。 K寮の門限は致命的な 時。合コンではこれから2次会、テレビでは茶の間の話題をさらうドラマが始まろうという時間である。 その 時に1分、1秒たりも遅れてはいけない。恐るべき罰則—風呂掃除(4畳半ほどの浴槽が2つもある!)、草むしり(夏期のみ。炎天下のなか、テニスコートの周りを何周も)、夕食後の後片付け、挙げ句の果てに1ヵ月の外泊禁止が、彼女たちを待っていた。 だから122人の女子大生たちは、その2m はある金網の上、五線譜のように張られたバラ線を、毎夜毎夜越えてくるのである。 バラ線を越えるまでの手順はこうだ。外から友人に電話を入れ、門限までに帰ることができないと伝える。伝えられた友人が果たすべき役割は2つ。1・電話を 切ると素早く玄関へと走り、彼女があたかも部屋にいるように、点呼ノートにその子の名前を書く。2・彼女が登ってくるばら線に一番近い場所の非常口を開け ておく。そしてその子が部屋のドアをノックしてくれるまで、ビクビクしながら時を過ごすのである。 |
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「向日葵」の記憶 |
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ぶんぶんぶん -
随筆
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片寄 窓吉一九四五年八月、戦争は終わった。 もの音というもの音がピタリと止んで、白く乾ききった日が何日も続いた。空はことに静かだった。 診療室の電灯のまわりを数匹のふとった蝿がとびまわっていた。 「君は、どうするんだね?」 軍医はひげをあたりながら言った。 「田舎へ帰ります」 奥の部屋から看護婦の声がした。 「ああ、東北だったね」 「はい、青森です」 「そうだ、いつだったか林檎をもらったことがあった。ありゃあうまかったなあ」 「先生ったらあのとき、両手に林檎を持って、かわるがわる噛ったりして……」 「そうそう、あんまり珍しかったもんだから……で、ご両親は?」 「元気でいると思います。田舎へ帰ればわずかですけど田畑もあるし、食べるには困らないから……」 「そうか」 「先生は?」 「おれか?」 軍医は剃刀を宙に浮かしたまま、 「おれはどうなるのかなあ……」 |
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フェリーニ・フェリーニ |
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ぶんぶんぶん -
随筆
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竹屋沙緒竹 目が覚めたらもう9時半だった。テレビをつけ、チャンネルをあちこち回していたらモノクロ映画が目についた。前後のチャンネルから想像するに、3チャンネルの番組らしい。若い頃のマルチェロ・マストロヤンニが映っている。 タイトルが分からない。でも面白そうだったので、そのままにしておいた。 ラストシーン。そしてロココ調の飾り文字が黒い画面に浮かぶ。 “8 1/2”。ああ、フェデリコ・フェリーニの映画だったのか…。 ★ フェリーニの映画はこれまで2本だけ見たことがある。大道芸人ザンパノと彼に買われた娘、ジェルソミーナの物語「道」と「ボイス・オヴ・ムーン」だ。「道」は今また見ても目頭が熱くなってしまうだろうナ。 どんな映画監督でも皆それぞれに得意分野というものを持っているが、フェリーニは悲劇だ。 物語は保養地の温泉地で始まる。 |
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